企業と博士人材の交流会

今日名古屋大学で行われた、2017年度(平成29年度)企業と博士人材の交流会に参加してきました。

企業と博士人材の交流会ホームページ

博士人材が、産業界への就職も含め、多様な業種・分野の企業と交流するのが目的のイベントです。

参加者は、自分の研究内容を中心にしたポスター発表をして、それを企業の人が聞いて回り、参加者も、いろいろと質問をして交流しよう、という企画ですね。

「え、就職するの?」

とか言われちゃいそうですが、僕が参加した理由は3つあります。

1.日本の産業界での博士の地位

最近は、新卒学部生と比べて遜色ないといわれていますが、言い換えれば、学部生と同列に扱われているわけで、そのような価値観が正しいとは到底思えません。学部生よりも遥かに多くの知識と経験を持ち、かつ、その優秀さを大学が証明しているのですから、それを学部生と同列に扱われるのは間違っていると思います。

このような誤った価値観を直すためには、博士を持っている人が、実際に、自らの手で博士人材の有用性を示す必要があると思っています。そうしなければ、日本が良くならないと思うので、それを実践しているだけです。言い出しっぺの法則というやつです。

これを読んだ人で、今の日本の価値観が間違っていると考えていて、僕の意見に賛同してくれるのならば、一緒に行動を起こしましょう。行動に起こさないと、世の中変わりません(ここだけ切り取ると、何か悪いことを扇動してる人に聞こえる…)。

2.理論物理学研究者という仕事への理解

「へー、難しいこと勉強してるんだねー」と言われることがあるのですが、

「いいえ。研究は仕事です。」

あと、僕は前から言っているのですが、

「研究者という仕事は、特殊ではあるが特別ではない。」

ということを、周りの人たちに理解してもらうことが大切だと思います。

僕らのやっている仕事のエッセンスを取り出すと、「問題をどう定義するのか?」「問題をどう解くのか?」「得られた結果をどう解釈するのか?」という3つにわけることができると思います。1つ目に関しては、僕らの仕事に特有なもので、仕事のテーマをお客さんから依頼されたり、上司から仕事が降ってきたりする業種との明確な違いだと思います。3つ目に関しても、ただタスクを実行して結果を報告するだけではダメで、最初に定義した問題に対して、どういう答えになっているのかを考える必要があります。ですので、シンクタンクや技術系の研究所の除いては、他の業種との違いになっているのかなと思います。

しかし、2つ目に関しては、ただのテクニックの問題です。世の中の自然現象は、大体、微分方程式で書けるわけですから、上手に微分方程式を解く技術があれば、誰だっていいわけです。Mathematica先生を、ライセンス契約料を支払って雇用すれば、大体のことはうまく行きます(自らへの戒め)。

テクニックは単なる経験値だと思うので、そこだけを取り出せば、どんな仕事にだって対応できるはずです。博士の人間はそれをもっと認識するべきで、それを主張していく必要があるのだと思います。例えば、専門性やテーマの面白さを志望動機に書いたところで意味はないと思います。むしろ、そんなことばかり言っているから、「博士人材は使いにくい」とか言われちゃうわけです。どういう手法で問題を解く技術があるのか(例えば、数値計算とか、どの言語を使っているかなど)を伝えるべきかと思いました。

3.基礎科学の重要性

僕らがやっていることは、決して人様に恥じるようなものではありません。人の生活を豊かにできるかどうかはわかりませんが、人の心を豊かにすることはできます。そして、僕らのやっていることは、人類が滅びない限り、半永久的に残るものです。

また、自分の仕事の重要さを胸を張って言うだけの自信と、それを他の業種の人達にわかりやすく説明する技術を身につけなければならないとも思っています。それこそが、世の中の真理を探究するものとしての義務だと思います。俗にいう、アウトリーチ活動、というやつです。

感想など

何はともあれ、いろんな人と交流を持つのは大事なわけです。たまには仕事を離れて、こういうところに行ってみると、いろんな価値観に触れることができるので、いろんな考え方が身につきます。

実は、去年も参加したのですが、去年に僕のポスターを見に来てくださった3つの企業の方が、今年も見に来てくれました。地味にうれしかったです。

ただ、まあ、早起きが大変でした。

今年は、学生・ポスドクの参加者がかなり多く、ゆっくりと話をすることができませんでした。あと、周りはほとんど博士課程の学生ばかりで、ポスドクはほとんどいなくて浮いてました(笑。

 

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